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Side.片山健司
夏前のよく晴れた日。
授業はワケのわからない言葉で埋め尽くされていて、退屈で仕方ない。
今日の午前中は、数学以外全部寝てやった。
少し前に席替えをしたら、何故か弘織が隣の席で、授業中机に突っ伏して寝ようとすると、何かと邪魔をしてくる。
起きてたってどうせなんもわかんねぇんだから、後でお前のノート見せてくれりゃいいだろ、って言ったら、なんとも腹の立つ呆れ顔で「お前…」とか言うから、とりあえず1発すねを蹴っておいた。
そんなこんなで昼休み。
こんないい天気に昼寝しないなんてもったいない、と中庭の大きな桜の下にあるベンチを目指す。
しかし、すでに弁当を広げた女子に占領されていて、ゆっくり昼寝ができるようなスペースはなかった。
(…だる)
このまま教室に引き返してもよかったが、せっかくこんなに気温もちょうどいいのだから軽く歩くか、とどこへ行くともなしに歩き出す。
中庭を抜けると、人気のあまりない武道場の近くに出た。普段、武道系の部活でしか使わない場所だからか、昼休みの今はしんと静まっていた。
手頃なベンチがないか辺りを見回す。 ベンチでなくても、日陰のちょうど良さそうなスペースがあればそれでもいい。
しばらくうろうろしていると、どこかからすすり泣くような声が聞こえてきた。
(まじか。…ここ"出る"感じ?)
幽霊の類いは特に信じてはいない。が、実際に声を聞いてしまうと、もしかして?と思わざるをえない。
半信半疑、怖いもの見たさで声のするほうへ近づいてみる。
どうやら、ちょうど武道場の陰になっているところから聞こえるらしい。
思いきって覗いてみる。
「うぉ、イケメンが泣いてる」
「ふぇ!?!?」
しゃがんで膝を抱えながらぽろぽろと涙を流しているイケメンを発見。なんだ、お化けじゃねぇじゃん。なんなら向こうの方が驚いている。もともとデカイのだろう目をさらに見開いて、ぱちぱちと瞬きを繰り返している。
驚かしてごめんな?
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