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人形
腹話術師が、腹話術師そっくりの人形と会話していた。
人形がツッコんで、腹話術師がボケる。
満席の客席から、絶えず笑いが湧き上がっている。
そのうち、人形が一方的にしゃべりまくって腹話術師は黙ってしまった。
さまざまな不満をシャレでなく本気でぶちまけだしたのだ。
「やってられんわ」
やがて、腹話術師はふらふらと身体から力が抜け、ぱたっと床の上に横になってしまった。、その腕の先についていた人形は腹話術師から離れ、床の上をとことこと歩いた。
腹話術師が人形を操っていたのではなく、人形が腹話術師を操っていたらしい。
しかし観客はさほど驚かなかった。彼らも背中から手を突っ込まれて笑い声をあげていたのだから。
人形は、とことこと客席に下りてどこかに消えた。
残された腹話術師の身体はすぐ片づけられた。
次の芸人が舞台に立つ。
「やってられんわ」
そう言いながら、やはり客は笑い続いた。
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