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今年も2ヶ月の研修期間を終えた新入社員が6月に職場に配属された。
僕の所属する設計開発部門には、はきはきと話をする新人らしい元気な女性が1名配属された。
職場の社員が集まったところでのその新入社員の配属の時の自己紹介では、
「伊藤 遥です。
大学では、理工学部で電子工学を専攻していました。
仕事の事は、まだ何もわからなくて皆様にご迷惑をおかけすると思いますが、一生懸命頑張りますので、いろいろ教えてください。
大学では、テニスサークルに所属していましたので、テニスをする機会がありましたら、ぜひお声をおかけください。
よろしくお願いします。」
と笑顔で元気に挨拶していた。
その後、伊藤さんは席をまわって一人ひとり挨拶をしていて、僕の席にも挨拶に来た。
「伊藤です。
よろしくお願いします。」
伊藤さんは、深々と頭を下げてきたので、僕もそれに答えた。
「若林です。
こちらこそ、よろしくお願いします。
ごめんなさいね、立って挨拶できなくて!」
すると伊藤さんが、
「若林さんは、足どうかされましたか?」
今までの新入社員は、遠慮して僕の足のことを聞いてこなかったけれど、伊藤さんは遠慮なく質問してきた。
僕は、足の事を気にしているわけではないし、伊藤さんのようにはっきり質問してくれたほうが、かえって気が楽になる。
「実は、小学生の頃に交通事故に遭って、脊髄を損傷して下半身が思うように動かないんだよ!」
伊藤さんは、そんな僕に思わぬ発言をした。
「私でよろしければ、何でも言いつけてください。
若林さんのお手伝いします。」
僕は、こんなことを言う新入社員は、はじめてで、何かとても新鮮な気持ちになって笑顔で返事をした。
「それは、ありがとね!
助かるよ!」
この時の伊藤さんの笑顔が印象的だった。
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