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後悔しながらもそもそと焼き鳥をビールで流し込む。
流れる音楽に顔を上げると、目の前の広場で盆踊りをやっていた。
……そうか、もう盆か。
そんなことすら忘れていた。
いや、忘れていたくてひたすら仕事をしていた。
ぼーっと踊る人々を眺めていると、ちらちらと鮮やかな、金魚の浴衣の女性が目に入る。
「私には派手かしら?」
そう云いながらも子供のようにはしゃぐあいつを眩しく見ていたのはもう去年のこと。
あいつなはずがない、もうあいつはいないのだ。
わかっているのに、目は金魚の浴衣を追ってしまう。
お面をしているが、背格好も髪型も、仕草すらもあいつに見えた。
とうとう、いてもたってもいられずに席を立つ。
女性の傍に行くとその手を掴んだ。
「おまえ、なのか?」
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