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「そ、それは困った」
「『どうして私?』とか思っちゃう」
「そんなの、俺だって思ってるよ」
「え~っ、
『どうして佳乃なんかを?』って??」
「違う、違う。
『どうして俺?』とか思ってる」
「か、和真ほどの男が?」
目と目で会話して、笑う私たち。
100%愛される自信なんて、
誰も持っていないはずで。
人間というのは、
毎日『好きだ』と言ってくれても、
どんなに尽くされても、
心の中は別だと疑ってしまう
厄介な生き物なのだ。
厄介だからこそ私たちは努力する。
この関係が長続きするようにと。
いつまでも一緒にいられますようにと。
「佳乃、おいで」
「はいはい」
カーペットの上で胡坐をかいている
和真の膝に乗ると、
ギュウギュウと抱き締められた。
「佳乃、好きだ」
「うん、私も」
やはりその言葉を聞くと不安になるけど、
その心臓の音がサンバみたいに煩いので、
信じることにした。
この人にとって
『好き』は軽い言葉なんかじゃなくて、
毎回ドキドキしながら
言ってくれているのだと。
それが分かったからもう、
私はこの人を信じることにしたのだ。
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