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わたしたちは晴れているのに傘をさしている。
空から雨でも雪でもなくて、イナゴが降ってくる。茶色い、でっぷりと太った大きなイナゴがばらばらと落ちてくる。
街はイナゴで埋め尽くされた。家の窓にも道路にも、至る所にイナゴがびっしりと張り付いていて、道を歩けば無数のイナゴを踏み潰すことになる。
どれだけ殺してもイナゴは減らない、日々数を増していくばかりだ。
なぜ日本でイナゴの大群が異常発生したのか専門家にもわからない。異常気象の影響とも囁かれているが定かではない。
イナゴが野菜や稲や植物やあらゆるものを食べつくして、日本はたちまち食糧不足に陥った。
イナゴは世界中で異常発生していて、日本を援助できる国もなかった。
老人や子供、大勢の人間が餓死していった。
残されたわたしたちはイナゴを佃煮にして、それでも空腹がまぎれず、猫や犬も食べた。
それでも満足できずに、わたしたちは餓死した人間の肉も食べ始めた。
それでも満足できずに、わたしたちは生きている人間を殺して、新鮮な人肉を手に入れることにした。
虚ろな目をしたわたしたちは今日も人肉を食べている。
人肉は猫や犬やイナゴよりも美味い。
いつか食糧不足が解消されても、人肉を食べることだけはやめられそうにない。
わたしたちは美食家だ。
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