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「やはり油断ならぬウェステルレイン公爵の息子よ! おおかた父の命を受けてのことであろうが」
昨日まで、いや先ほどまで、心浮き立つ夏の訪れを彼と一緒に喜んでいた人々が、今は彼を口汚くののしり、しきりに足蹴にしている。これを機に、あの一派は一掃してしまわねばならぬ。たった今起きた死に関する抜け目のない言葉が、血刃をぶら下げて立ち尽くすコーネリアスの耳を打った。
「コーネリアス、よくやった、よく陛下のお命を守ってくれた」
朝議に参加していた世継ぎ候補の一人が、興奮に震える声で勇気を褒め称える。当のコーネリアスは衝撃のあまり、腕をつかむ彼の力に頼って立つのがやっとだった。
「ちょっと待ってくれ、おかしいだろう。なぜセオフィラスが……? あれほど賢い男が、なぜこんなことをする。こんなことがもし成功しても、公爵に渡る王位に正当性はない。誰も後に続かない。あれは、それくらいのことが、わからない男ではなかった」
それに、セオフィラスに殺意などなかった。コーネリアスの知る彼はあんなに安易に刃をふるったりしない。少なくとも、混乱のなか闇雲に差し出された剣に胸を貫き通されるほど、間抜けではなかった。あれでは彼はまるで、殺されに来たかのようだ……。
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