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 男は、蓮のように小さな、砂に汚れた室内履きの爪先からそれを取り上げ、ぞんざいにめくる。質の悪い墨を溶いたものでつづられた文字は忌々しいほどに鮮やかで、ささくれ立つ安い紙の上にあっても、その清さ、瑞々しさを失わない。  書きはじめの日付は、まだ新しい。男は、母語ではなく、遠く東の国の文字で綴られたそれに、眼差しを落とした。
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