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カウンターにポタッと涙が落ちた――
あれっ、なんで?
私は急いで涙を拭う、
「瀬山さん、瀬山さんって」
同僚の小谷さんが小走りに駆け寄り、俯いていた私に肩を叩いた。我に帰った私は、目の前にあるレジカゴに気づく。
「あ、すっすみません」
いっぱいに詰められた商品を一つ一つレジに通す。
あ、私が好きだったアイスだ、しかも二個買うんだ――
あ、コーラ、ゼロじゃないやつだ......二個。
この人、私と同じだ!
体格で男の人って分かった。
奥さんかな? 彼女かな? 買ってあげてるんだろうなー。
チラッと顔を見ると、キャップを深く被り、マスクをして下を向いていた為、顔が見えなかった。
それか、私みたいな女に買いに行かされたのかな?
ニヤリと表情には出さずに、笑ったつもりだった。
カゴの一番下、最後の一つが、うちのコンビニでは売っていない物が入っていた。
何だコレ?
ネズミ色の小箱、お菓子かな?
でもバーコードがついてない。
私は、その箱をくるくると回して見るが、やはりバーコードが無い、
「あの......お客様これは......?」
キャップの男は「どうぞ」と手の平を見せて、会釈する。
「私に?」
男は、黙って二回頷き、手を下す。
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