コンビニ結婚

1/6
前へ
/6ページ
次へ

コンビニ結婚

 我が町にもやっとコンビニができた。  実家の田舎には、このご時世コンビニに行くのに車で二十分かけて、隣町まで行かなければならなかった。  瀬山恵子(せやまけいこ)、一ヶ月前、離婚して東京から実家に帰ってきた......  一度味わった便利な生活に慣れると、この不便さは本当に苦痛でしかなかった。  しかしそれも今日まで......  なんたって、コンビニにが出来た!  それも、家から歩いて一分の場所に! 「恵子、帰って来たなら、バイトか仕事しなさいよ」  帰郷するや否や、母の第一声がこれ――  「言われなくても、分かってるよ」と目を伏せながら呟いた。  仕事から帰った父は、昔から無口な性格だった為か、「おかえり」とだけ言うと、夕食のビールを飲む。  久しぶりに家族三人での食事、母が隣でギャーギャーと騒ぐ中、父は頷くのみだったが、表情は緩んでいて、何だか私が帰って来た事が嬉しそうに見えた。  コンビニの店員――  唯一出来たコンビニでバイトする事にした。     
/6ページ

最初のコメントを投稿しよう!

39人が本棚に入れています
本棚に追加