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「ちょっと、お客さんだって!」
堪らず俺は奥に声をかけた。
「今取込み中だから、お願い♪」
あんた弁当食ってるだけでしょうが!
「い、いらっしゃいませ!」
って、レジ側に回って思わず言ってしまったわ!いいのか。こんな常連さんばっかのスナックみたいで!
そんなになっても、まだ彼女はバックヤードから出てこないので、ヤケクソで俺は数人の客相手に、見様見真似でレジ打ち接客をしたともさ。大学時代にスーパーでバイトしてて、本当に良かった。
ひと仕事終えてグッタリしていると、ようやくカーテンの向こうから笑顔で登場したのは、
「ご苦労さま~♪あれ?あんたって誰?新人さん?」
やはり美少女と誉れの高い彼女だった。この数分で、すこぶる印象が変わったが。
いやいや、ここでアルバイトする気は、さらさらないからね。
「ちょっとあんた、先輩のフォローがなってないよね。制服も着てないし、だいたい弁当のことだって…」
いきなり説教モードなんですけど。弁当のことってなんなんですか?
その剣幕に恐れをなして言い返せないまま、俺はまじまじと彼女の顔を見ていた。
「あたし名前入れてたでしょ。ちゃんと用意してよね。んとに!」
そこで初めて俺は彼女の名札を見た。
彼女の名は『三和 凛』。
『さんわ りん』ちゃんだったのだ。
[了]
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