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「おおおお母さん!今って何年?」
「はい?」
「だから、西暦何年?」
「二千十七年じゃない。どうしたの?突然。」
「いや…あれ?で?今は?五月?」
「そうよ。やーねー、五月病?早く学校に行く支度しなさい。朝ご飯できてるわよ。」
そう言うと、母は部屋を出て行った。朝からの大騒ぎ。それにはどうしようもない訳がある。私には、木崎翔平(きざき しょうへい)と言う彼氏がいる…否、いたのだ。
翔平には、二千十七年七月十五日の夏祭りで告白されて恋人になった。高校一年生からの短い仲ではあるが、私は翔平に一目惚れをして、大好きで、告白された時はドッキリなんじゃないかと思ったほどだ。
なのに現在(いま)は五月…。
(つまり私と翔平は付き合っていない?)
友人同士と言うことだろうか。試しにメッセージアプリを開いてみると、その中の会話はどれを見てもやはり、とても恋人とは思えないものだった。
「ピリー!どうせなら告白後に戻してよ~!」
縋る思いでスマートフォンを握りしめるが、嘆いてはいられない。夢か現かはわからないが、私は今、二千十七年五月九日の東京にいるのだ。
その事実が確かである以上、できることなら平穏な暮らしを送ることだ。そしてもう一度、叶うなら翔平と恋人同士に戻りたい。その一心である。
「は~あ…。」
しかし、どうしても大きな溜め息が出てしまう。私は両頬をパシンッ!と叩き、気合をいれた。
「絶っったいに元に戻ってやるんだから!」
そして身支度を済ませ、私は学校へと自転車を走らせた。
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