改めまして、こんにちは。

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翔平は、カラカラ笑う。この笑顔が私は大好きなのだ。この笑顔の隣りを独り占めしていた時のことを思うと今でも幸福で…ピリーを恨めしく思う瞬間でもある。 「ねぇ、翔平。古典と英語の課題やってきた?」 「やってきてないから、今しおの写してる。」 「汐く~ん。」 「何だ、古谷もか。いいぞ、別に。」 「有り難う!」 「あ!何だよしお!俺にはジュース奢れって言ったくせに!」 「女子には甘くて当然だろ。そんなこと言ってないで早く済ませろよ。」 「ちぇー、鳥花。女子扱いされていい気になるなよ。」 「にゃっひぇにゃいよー。」 不意打ちに、翔平に頬をつねられた。これがなかなか手加減を知らないから厄介だ。その時、 「おはよう、木崎くん。」 「おお、おはよう谷(たに)さん。」 クラスメイトの谷麻里香(たに まりか)ちゃんが翔平に声をかけてきた。彼女はふわふわの髪の毛に柔らかな雰囲気、男子が好きな女子…と言ったところだろうか。 しかし、私はここで混沌とする。私が知る、私が一度経験した未来(いま)では、彼女と関わることは一切無かった。 「………。」 「古谷、何ぼーっとしてんだ?写し終わったのか?」 「え?あ、ああ、ごめん。もうちょっと。」 まあ、クラスメイトが挨拶を交わすなんて当たり前のことだ。私の記憶も細やかなところまでは流石に覚えていない。なんてことない…そう、思っていた。のだが、 「木崎くんたち、一緒にお昼食べよう。」 「木崎くん、宮内先生が探してたよ。まだゴールデンウィークの課題出してないんでしょう?先生、怒ってたよ。」 「木崎くん、私も勉強会に混ぜて貰っても良いかな?」 「………。」 (あり得ない。) こんなこと、確実に前には無かった。申し訳ないが、麻里香ちゃんとの関わりがない私には、その存在は大変、薄いものであったくらいだ。
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