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最終日の金曜日、私は皆んなと別れて自転車置き場へ行くと、
「よっ!」
「わっ!」
突然、後ろから頬に冷たい何かが触れてきた。振り返ると、
「翔平…。」
「ほらよ。」
翔平に手渡された物は、私の好物である紙パックの林檎ジュースだった。
「有り難う。…翔平、徒歩じゃん。皆んなと帰らないの?」
「駅まで自転車の後ろに乗せて貰うほうが楽じゃん。」
「二人乗り、駄目、絶対。」
「堅いこと言うなよ。それ、やったろ?」
そう言って私の手の中の林檎ジュースを指差す。
「仕方ないなぁ。」
「なぁ、鳥花。」
「ん?」
「最近、何かあった?」
「え?」
「無い。」と言えば嘘になる。が、しかし相手は当の本人の翔平なわけで、「有った!」と言うことはできないのだ。
私が必死に言い訳を探していると、翔平は私の頭をくしゃくしゃと乱雑に撫でた。
「わっ、な、何?」
「俺には話せないこと?」
「そう言うわけじゃない…けど。言いにくい。」
「鳥花にとって俺ってそんなに信用ない?」
「そう言うんじゃないよ!…ただ、今はまだ自分の中でも整理がついてなくて、相手が誰でも話しにくいの。」
「ふーん。」
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