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「谷さん達と遊びになんて行かないよ。行くわけないじゃん。」
「だって…クッキー貰ってたじゃん。」
「小腹空いてる時に渡されれば、貰えるもんは貰うだろ。」
「…貰わないよ。そう言うのは、好きな子から貰うんだよ。」
「なら。」
翔平は私の両頬に手を添えて、俯いていた顔を無理矢理上に向かせた。歪む視界の向こうで、翔平と視線が重なる。
「もう貰わないよ。鳥花以外の女子からは一切貰わない。」
「………。」
「てか、さっきの遊園地だって行くわけないだろ。メンバーの中に鳥花がいなかったじゃん。」
「………。」
「鳥花以外の女子と特別につるむ気ないから、俺。」
「…ふえぇ。」
その言葉はまるで魔法。
先ほどまでお腹の中を蝕んでいた黒いもやもやが、一気に消え去って行った。
だがしかし、私の涙も一度線を抜いてしまったから止まらないのだ。今までの気持ちが流れていく。
「ふっ、ぶっさいくな顔だなぁ。」
そんな私を見て、翔平はますます私の頭を乱雑に撫でる。
「グスッ…誰のせいだよ~。」
そのお返しに私は翔平の胸を叩き、翔平の腕の中で涙を枯らした。
人間は醜い。こうして私が安堵の中にいる内に、違う理由で涙を流している人がいるのだろう。
だがそのことに、私の心はちっとも痛まなかった。手放せないものがある。そこには、人の心も含まれている。
未来も現代(いま)も関係ない。私が欲しいのは翔平の心。それだけなのだ。
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