親友は、春の風のように。

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すると沙都子ちゃんは、不思議そうな面持ちで首を傾げる。 「ねぇ、確認したいんだけど。」 「何?」 「何で二人、付き合ってないの?」 「はい?」 矢庭の質問に、私は目を見開いた。 「『貰えるもんは貰うだろ。』 『貰わないよ。そう言うのは、好きな子から貰うんだよ。』 『なら、鳥花以外の女子からは一切貰わない。』 だよね?」 「うん。」 「それはつまり、翔平くんは鳥花のことが好きなんじゃないの?」 (まあ…未来(むかし)は付き合っていたわけで、否定はしにくいのですが…。) しかし此処は何が起こるかわからない世界。確信もないのに軽薄な発言は慎むべきだ。 「んー…そうなんだよねぇ。そうだといいんだけどねぇ。」 「翔平くん、貰えるものは貰う人だけどチャラくはないじゃない。」 「はははっ、貰えるものは貰うって。」 思わず笑ってしまった。 「だって本当のことじゃない。」 「うん。まあ、そうなんだけど。はははっ。」 何気ない。緊張を知らない友人とのこの空間が、今は何よりも居心地いい。私はこの世界に来て、初めてお腹を抱えて笑ったことに気がついた。 思いもよらない事態が起こり、知らず知らずの内に肩に力が入っていたようだ。 やっぱり沙都子ちゃんは春の風。その暖かさで、一気に私の緊張を攫って行ってくれた。そして異世界にも変わらないものがあることを教えてくれた。それは私たちの関係だ。 「あーおっかしい。ねぇねぇ、沙都子ちゃん。」 「何?」 「有り難う。」 「どうしたの?突然。」 「言いたくなっただけ~。」 すると沙都子ちゃんはいつかの日のように、「変な子ね。」と言う表情でまた首を傾げた。
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