その人は、とても美しくて。

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「古谷。」 「ん?にゃひ、汐きゅん。」 「おい鳥花、口に飯いれたまま喋るなよ。」 「てか…口に詰め過ぎ。」 体育祭も無事に終わり、六月も半ばの或る日の昼休み。メンバーはいつも通り、汐くん、翔平、沙都子ちゃん。 空の色が暗く、いつ雨が降っても不思議ではない模様である。 しかしそろそろ期末テスト一週間前の勉強会が放課後に催されるので、湿気も気にならない…と言えば大袈裟だが。嬉しさでいっぱいなのだ。 「『好きです。付き合ってください。』」 「ゲフンッ!ゴホッゴホゴホッ!」 「は?しお?」 「汐くん…どういう風の吹き回し?」 突然の真顔で棒読みの告白に、思わずむせてしまった。林檎ジュースを一気飲みして息を整える。 「どどど、どうしたの汐くん。いきなり。」 「そう言えって部活の奴から伝言を預かったんだ。」 「告白を伝言で済ませるって…なめてんのか?」 若干、翔平の顔が引きつったのを私は見逃さなかった。すると冷静な沙都子ちゃんが口を開く。 「で?その『部活の奴』って誰なの?」 「B組の社日向(やしろ ひなた)だ。」 「汐くんの部活って確か…。」 「将棋部だ。」 「あれ?社くんって確か…アマチュアの初段?持ってる子じゃなかったっけ?」 「そうなの?てか社くんって誰?」 「鳥花~お前のことだろ。何でそんなに呑気でいるわけ?」 「いひゃ、いひゃいよ、翔平。」 ご機嫌斜めのご様子が、頬をつねる手加減の無さから伝わってくる。ついでに付け加えておくと、この事態も麻里香ちゃんの時同様、未来には無かったことだ。
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