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母は元々キャリアウーマンで、蓮を生んだ後も復職していたが結局仕事は辞めて、保育園もほかの児童を傷つける危険性があったためすぐに退園させてそれからは家でつききりになった。他の子とは確かに異質なのかもしれないが、それでも愛しい我が子だった。
「おかあさん……かげん、てどうすればいいの? ぼくはふつうにしてるのに、何がだめなの?」
蓮は自分の意識と周囲とのギャップに何度もジレンマを感じた。強くつかんだつもりはないのに、気に入りのうさぎの縫い目から綿が飛び出たりすると、やはり子供心にショックだった。
そんな時、母は蓮の目をじっと見つめながら優しく言った。
「蓮。蓮はね、普通じゃないわけではないの。ただ、他のお友達より少しだけ力の入れ方が強いみたいなの。だからゆっくり、焦らずにちょうど良い力の加減を学んでいきましょうね?」
そんな時の母の目は大概泣いたあとのように赤くて、蓮はこくりと頷く以外、それ以上は何も聞けずにいた。ただ、自分が他の子どもと何かが決定的に違い、そのことが母を苦しめているのだということだけは、理屈ではなく肌で感じていた。
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