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ごった返す人混みの中、ずんずん進んでいく先輩の後を追う。
楽しそうに金魚やヨーヨー釣りをしているカップルは、別世界に見えた。
次第に顔は俯き気味になっていき、足は遅くなっていく。
とうとう地面に涙が落ちて足は止まったが、先輩は振り返らない。
通路のど真ん中に立って泣いている私に、怪訝そうに人々が振り返る。
先輩の姿はすでに見えなくなっていた。
……来なければよかった。
後悔しつつ、もう帰ろうと一歩踏み出すと。
「なんで泣いてる?」
息を切らせ、戻ってきた先輩に肩を掴まれ振り返った。
黒縁眼鏡の奥の、困惑気味な瞳。
「なんでもない、です。
それよりもう、帰りませんか。
やっぱり、罰ゲームでデートなんて、莫迦らしいです」
涙を拭って無理に笑うと、先輩の顔がますます仏頂面になった。
また涙が落ちそうになったが、無理矢理上を見て堪える。
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