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「君はいいね。何にも縛られず、何にも考える必要がない。のんびり日向ぼっこできるなんて羨ましいよ。」 関心を持たれないのをいい事に話しだしたのにただ真っ直ぐに前を向いている彼の眼を見ていると、段々自分が惨めに思えてきて、半ば八つ当たりのように吐き捨て、立ち上がる。その場を離れようとした時、 『お前もすればいいだけの話じゃないか。』  低く、どっしりとした声が返ってきた。振り返るとさっきまで少しも合わなかった目がはっきりと私を映している。  この時は不思議と驚きはなかった。この非現実的な出来事よりも、彼の言葉の方に心を捉われていたからだろう。 『やらなきゃいけない事を増やしているのはお前自身だろう? ならそれを少し削ったり後回しにしたりする決断を下せるのもお前自身だけだ。』  その言葉が胸の奥の方にストン、と落ちてきたような気がした。  その通りだ。大学で勉強をすると決めたのも自分。今のバイトを選んで、続けるという選択をしたのも自分。今の友達と一緒に行動する事を決めたのも自分。全部自分で決めた事なんだ。周りの人や物事は常に私に選択肢は与えているけれど、その答えのどちらか一方を強要はしていない。上手くいかない時の言い訳に思い込んでいただけなんだ。     
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