虚ろな目の店員

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 魂が抜けたように虚ろな目をしていた。  男は怪訝な顔を浮かべ、若者を見据えた。 「オーナー……もういい。煙草、25番の」  男は投げつけるように小銭をカウンターに置き、それとわかるように荒々しい口調で注文だけを伝えた。  それでも若者の返事はなかった。虚ろな目どころか、ぶつぶつと歌うように何かを呟いている。  男は怒鳴り散らしたい気持ちを必死に抑えていた。  若者の名札には研修中であることを示す文字が印刷されていた。 「煙草だよ。た、ば、こ! 言葉通じているのか?」  オーナーは人柄もよく、バイトの教育も徹底していた。昼に立ち寄った時は、高校生ほどの女の子でもハキハキと笑顔で応対してくれて、実に感心したものだった。  しかしその若者ときたらどうだろう。いらっしゃいませ、さえ言わないどころか、客を無視するときた。髪を染めてはおらず、見た目は真面目そうなのだが、とんだ無礼者だと男は心の中で毒づいた。 「おい、聞いているのか!」  男はついにカウンターを手の平で打ち、声を張り上げた。  その瞬間だった。虚空を見つめていた若者の目が微かに動き、ぴたりと男を見つめた。  目が合ったのだ。
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