32人が本棚に入れています
本棚に追加
/246ページ
龍也が慌てて尚を抱き上げる。
「大丈夫か?」
「タツが悪いんだよ! 変なこと言うから!!」
龍也の胸を思い切り押し返すも体力に差があるのは歴然で、龍也はぴくりとも動かなかった。
「変だよな。確かに。俺って変態かもしんね」
落ち込んだように言うが、その手の力は緩まない。
龍也の尚を見る目は、いつもの過保護なそれとは違っていた。いつもと違う雰囲気に、龍也の本心がわからない。どこまで本気で、どこまで勘違いしているのか。
「ち、がうと、おもうよ」
顔を真っ赤にしながら、尚は途切れ途切れに言った。
「タツはね、勘違いして、る」
「勘違い?」
「うん、ごめん、タツ、悪くない……。僕が、こんな、だから、だから」
「――!」
「ん!」
突然胸に圧迫感を覚え、小さく唸り声が出た。
龍也が尚を掻き抱いていた。
「勘違いなんかじゃねえし! いや、勘違いでもいいんだよ」
「タツは、僕の、女の子みたいな体に……」
「そんなん、どうでもいいって言ってんだろ! それもこれも全部ひっくるめてナオって奴で、俺は、俺は、それも全部、自分のモノにしたいって思ったんだよ!」
龍也の声が風呂場の壁に反響して、尚の脳髄にまで響いた。
声が止むと、相変わらず激しい風が、窓の外で唸っている。
「だから……ゴメン」
尚を引き剥がしながら、絶望したような表情で龍也が呟いた。
『相思相愛で何を悩むことがある?』
竜平の嗤う声が聞こえたような気がした。
――僕もごめんね。タツのことが好き過ぎてゴメン。
口には出さず、啄むようなキスを龍也の顎に落とした。
最初のコメントを投稿しよう!