四 夕凪

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 ――俺はあいつとは違う。  思春期に入り、性欲を感じるたびに襲われる嫌悪感。それを払拭するかのように付き合った女と体の関係になるのは早かった。自分にはあの男のような狂気は無いのだという証明をしたかっただけだ。  けれど、それほど好きでもない相手とするのは、何の感情も生まれない――と知った。快楽はあるがそれだけである。むしろ、同じ女と二回目の交渉は無かった。二回目の前に、女の束縛が嫌で別れてしまうから。  ならば、最初から抱かなきゃいいのに、なぜかいつも流されてしまう。  だから、拒めなかった真鈴のキスも同じように嫌悪感だけが残るのだ。  無意識に唇をこする。  使わなかった尚のスウェットを仕舞いながら思い出すあの男の眼。  尚の肌を見て連想したのがこれかよ――と、絶望する。  まるで尚を汚してしまったような気持ちになった。  ――俺の告白をナオはどう思ったんだろう。  返事は顎へのキスだった。  嬉しくて、でも罪の意識が大きくて切なすぎて、それでも反射的に尚のおでこにキスとも言えないくらい淡く唇を落とした。  ――「僕も好きだよ。だからずっとずっと、一緒にいて欲しい。タツの全部が僕の物であって欲しいんだ」  胸の中で尚が言った。  それは恋人という意味なのか、それとも親友という意味なのか。  難しいことはこれ以上考えられず、  ――帰ったらリュウにでも相談しよう。    頭を切り替えて部屋を出た。
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