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「そんなわけないじゃん!」
廊下に大笑いするナミの声が響く。尚の笑い声も聞こえてきた。
食堂の和やかな雰囲気に、龍也はほっと胸を撫で下ろす。
「すいません。遅くなって」
「遅いよー、お兄さん」
ナミが手招きする。
ナミの向かい側の席が空いていた。
隣に座った尚は、大皿の唐揚げに箸を伸ばしていた。
「あたしゃ、てっきり兄と妹だと思っていてねえ」
先ほどの話の続きだろう。お婆さんが眉を下げながら言う。
「酷いでしょ?」龍也の方を向いて、尚もその勘違いに笑いで返していた。「確かに半分女の子みたいなものだけどさ」
その言いように龍也は内心、どきっとしたが、尚は全く意に介さないように見える。
「だから、明日もお客さんがいないし、もう一泊すりゃあええって誘ったんだよ」
お婆さんが続けた。
「いや、あの……」
いったいどこまで話が進んでいたのだろう。尚はしらっとした顔でご飯を食べ続けている。
「いや、着替えもないし、ナオの親が心配するから。こいつ、まだ中坊だし」
「え、僕はいいけど?」
付け合わせのトマトを頬張りながら、上目遣いで龍也の方を見た。
「ほぉら~、どうする? お兄さん」
賑やかなナミの横で、黙々とご飯を食べ続けている真鈴をチラリと見た。
あんなことがあったのだ。正直、真鈴の側にいること自体が心苦しかった。
「いや、明日はバイトがあるし……」
龍也はやんわりと断った。
尚はキョトンとした顔で、「まあ、そうだね」と納得したようだった。
「……にしてもさ、マリンとお兄さん、何かあった?」
「え?」
「何言ってんの!」
ナミが投下した突然の爆弾に、龍也と真鈴が同時にナミの方に視線を投げた。
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