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「だってさ、二人とも一度も目を合わせてないし、マリンったらだんまりなんだもん」
「うるさいわね! 何にもないわよ!」
「ねえ、お兄さん、どうなの? この人、もしかしたら」「余計な詮索しないでよ!!」
「これ、お客様の前だぞ。姉妹喧嘩は止めんさい。みっともねえ」
ぴしゃりと、お婆さんが制した。
「ごちそうさま! お婆さん、美味しかったです。なんだかご馳走になっちゃって。うちの母親のご飯よりも美味しかったかも」
「そりゃあ、光栄だね。良ければ来年は連泊でおいでよ。宿泊代は安くしてあげるからね」
「本当ですか!? じゃあ、ほかの友達も誘い合わせて来たいなあ」
その場の気まずい雰囲気を物ともせず、尚がお婆さんと話を弾ませていた。
――こんな風に、他人の中にすんなりと溶け込む奴だったっけ……
何にせよ、助かった。
尚はそのまま、お婆さんと厨房に入って行った。食べ終えた食器を片付けるのだと言う。
龍也も早々に食事を終わらせた。
お婆さんの手料理は美味しかったはずなのに、味など憶えていなかった。
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