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「嫌いなんかになるわけないだろ」
龍也がいつものようにハグした。
「俺が悪いんだよ。ナオのことをダチ以上に好きになっちまったから。男同士で、変態じゃんって、自分でも思っちまう」
「なら、わからないの? 僕は今ならどっちにでもなれるんだよ。」
「なれるもんか」
「なれるよ! 現に今だって、この女子みたいな体を諦めきれなくて、治療も手術も迷ってるくらいなんだよ。だったら、いっそのこと、」
「違うだろ! いっそのことなんて簡単に言うな。もっともっと、ナオは自分を大切にしろよ。適当にするなよ」
龍也の顔が尚の肩に埋められる。
「タツ?」
龍也が何かを堪えているように震えていた。
「ナオが本気で女になりたくて、心が女だって言うのなら、それでいいんだ。言ったろ?
ボインなナオでもムキムキのナオでも、どんなナオでもナオが成りたい自分ならばそれでいいって」
――そうだった。
曖昧な体で、でも心は正真正銘の男子で、なのにこの体を治療してしまうと自分自身を改造してしまうようで怖くて、おまけに意外とこの体は可愛らしくて自分の好みで、けれど本当はちゃんと強い男に憧れていて……そんな複雑な気持ちと体を抱えた尚を、丸ごと龍也は認めてくれたのだ。
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