エピソード① 産まれた時から変

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「先生、大変です! お腹にナニか硬いモノがあります!」 「な、なに~!」  昭和40年代のある日、元気な男の子が誕生した。ホッとする産婦人科医と 看護師達。ところが、後片づけをしている最中に母親のお腹に偶然触った 看護師が素っ頓狂な声をあげた。騒然となる中「こんちわ」と姿を現した そのナニかこそ、僕だった。  母親だけはお腹の赤ちゃんが双子じゃないかと疑っていたらしい。検診の度に 「二人いると思うのですが?」と言ったものの、医者は「ハハハハ、絶対に一人 ですよ」と笑い飛ばしていたそうだ。当時はお腹の中を画像で視れなかったから 間違い易かっただろうけど、何ともテキトーな産まれ方をしたものだ。  そんな訳で母子手帳も慌てて作ったから、僕の手帳は前半部分が真っ白。 おまけに2000g程の未熟児で、当時の医療技術だとマトモに育つか判らない 状態だった。それでもしぶとく育ち、僕ら兄弟は小学生になった。  ところが、誕生からして変だったせいか、それとも保育器の中の酸素濃度を 間違えたのか、とんでもなく「バカ」だった。 仮面ライダーに憧れて材木置き場の上から自転車で飛び降りたのが小学一年。 スパイダーマンに憧れて草野球場のブロック塀をよじ登り、8mくらいの高さから 落っこちたのが小学二年生。 教室ですっ転んで顎から大流血して「な、なんじゃこりゃああああ!」と叫び、 物干し台で遊んでいて岩に落ちて頭から大流血したことも。 どっちも大流血した時に考えていたのが 「シメシメ、これで憧れの救急車に乗れるな」 だったから、やっぱりバカである。おまけに両方とも結局救急車に乗れず、 頭から大流血した時は母親が日本酒をブシュ――ッと噴き付けて終わり。 メッチャ痛いし心底ガッカリした。  こんなバカが後に「本能寺の変」「桶狭間の戦い」を始め、世界中の難問や 暗号を次々と解いてしまうのだから人生判らないものである。
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