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大通りから少し離れて右へ左は小道を曲がり歩くこと数分。
「さぁ、着きましたよ。ここが探していたうさぎ探偵事務所です。」
「……ここがそうなんですか?」
辿り着いた場所はどう見ても探偵事務所って言うより
「でもこの場所、出ている看板に喫茶黒うさぎって書いてありますよ?」
「そう、だからうさぎ探偵事務所ですよ。」
にっこりと微笑まれてあぁやっぱり彼はステキな笑顔の人だなーなんて思っている場合ではなく、
「いやだからここは喫茶店って…」
「さぁ、中に入りましょう」
あたしのこえを無視して秋紀さんは喫茶店のドアを開ける。扉が開いた瞬間ドアに付いていたらしい小さな鈴が鳴るとカウンターに座っていた人がこちらを向く。
「あ、秋紀さんおかえりー!」
中性的な顔立ちの彼は秋紀さんを見ると満面の笑みを浮かべて出迎えてくれる。けれど、
秋紀さんの隣に立っているあたしに気づくとスッとその笑顔が消える。
「お前、誰?」
急に怖い顔をして誰?なんて尋ねてくるから思わず秋紀さんの服を掴んで彼の姿に隠れるようにその視線から逃れる。
彼はそんな私の行動を見ると席を立って近づいてき.っ!
「ねーねー秋紀さん。何この女。いきなり人の顔みるなり隠れるとかいけ好かないんですけどー。」
こ、怖いっ!!
ビクビクしながら秋紀さんの服をシワになるくらい掴んでると秋紀さんは優しい手つきで服をつかんでいる私の手を離し腰に手を回して自分の隣に立たせてくれる。
「知哉(ともや)、あんまり初対面の女性に高圧的な態度を取るものではありませんよ。アリスさんもそんなに怯えないであげてください。彼は知哉といいます。口は少し悪いですが根は優しいのできっとアリスさんもすぐに仲良くなれますよ。」
秋紀さんに諭されておずおずと顔を上げると目の前いっぱいに知哉さんの顔があってびっくりして悲鳴がでる
「ひっ!!」
「うーわっ!人の顔見て逃げた挙句やっと出てきたと思ったら悲鳴ですって。傷つくなぁー。」
とても冷たい視線を向けて話しかけてくるからどうにも恐怖心が消えずもう一度秋紀さんの後ろに隠れる。
「全く、あなたは…。」
「あれ、秋紀さん帰ってたの?おかえり。そちらの女性は?」
呆れた顔で秋紀さんが態度を改めない知哉さんを窘めようとするという奥から白いコック服を着た長身の男性が出てくる。
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