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30時間前の、あのアクアリウムでの緋柳盗難事件の犯人は奈津美だったのだ。
子供のころ、何度も友人の金魚をくすねた奈津美には、躊躇などなかったのだろう。
綺麗だから自分のものにしたい。そう言う単純な思考回路があの女の中には出来上がっているのだと、リクは数時間前、玉城に教えてくれた。
いや、教えてくれたのは、あの「奪われかけて、捨てられた」あやのという少女だったのかもしれない。
ガラス瓶の中で、涼しい顔で泳ぐ2匹の緋柳は、弱くて儚いと言われる割には逞しく見えた。
自分が一番綺麗に見えた赤い浴衣を纏い、奪われた金魚を水に返し、そしてあの世からリクを利用して新田奈津美に自分の存在を訴え続けた、あの少女になぜか重なる。
凛として強靭な赤。
玉城はもう一度カメラを見あげた。
あのカメラはしっかりと昨日、金魚をロッカーに一時保管しに来た奈津美を捉えていることだろう。
緋柳を盗んだ後、更にきれいなリクという獲物を見つけ、奈津美本人はすっかり忘れてしまっているのかもしれないが、希少価値の金魚だけにマスコミにもさっそく取り上げられた、注目度の高い窃盗事件だ。
これで少しはあの女に罪を償わせることが出来るかもしれない。
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