56人が本棚に入れています
本棚に追加
玉城はまずは何処に通報しようと携帯を取り出した。ロッカーの管理会社か、駅員か、警察の盗犯課か。
そう言えば長谷川の見合い相手は警察官だと言っていたような気がした。長谷川に連絡してみる方が先だろうか。
ふと手に持った携帯画面を見ると、さっきまでまるで気が付かなかったのだが、その長谷川からのメールを受信していた。
時間的に、きっと空港あたりから送ってきたものなのだろう。開いて飛び込んできた文字は、興奮しきっていた玉城をじんわり、穏やかな気分にさせた。
《リクを 頼むね。玉城》
リクが絡むとどうしてあそこまで不器用で可愛らしい人になってしまうのか。玉城は苦笑する。
〈ええ、分かってますよ。あなたが帰ってくるまで、僕が付いていますから〉
ひとまずその一文だけ送信したあと、ほんの少し視線を感じて顔を上げる。
ガラス瓶の中の緋色の生き物が、鮮やかに光を乱反射しながら、ひらりと舞った。
-Fin-
最初のコメントを投稿しよう!