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「あら、意外と良い男じゃない。
線が細くて、いかにも文学青年て感じ」
明日香さんが私の横から写真をのぞきこむと、吉澤君と高田さんも後から続く。
「凛ちゃんのパジャマ姿新鮮ですね」
「正直萌えるね!
セーラー服も可愛いけどね!」
3人のおかげで和やかになりかけた雰囲気は、蒼さんがアルバムを乱暴に閉じたことで一瞬にして凍りつく。
「勝手に萌えんじゃねぇよ、吉澤」
「はっはいゴメンナサイ!」
地を這うような低い声で凄まれて、吉澤君は涙目で本棚の影に隠れた。
「蒼君、落ち着きなさい。
吉澤君が何に萌えようと、それこそ彼の勝手じゃないですか」
「そうよ蒼。大体あんた、どうゆうスタンスでキレてるのよ。
前から思ってたけど
あんた達、一体どうなってるわけ?」
……どうもなってません。
無言で蒼さんに目を向けると、気まずそうに逸らされた。
花火大会のあの夜から、蒼さんは少しずつ私と距離を取ろうとしている気がする。
目が合うと逸らされることが多いし、
屋上で2人で過ごすこともなくなった。
こうしてみんなで図書室で過ごすのは楽しいけど、やっぱり少しだけ寂しい。
あの場所でのあの時間は、私にとっては特別で。
蒼さんが、私にしか見せない顔を見せてくれているような気がしていたから。
それにあの日から、
1度も好きって言われてない。
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