焼き餅焼くとも手は焼くな。

4/13
前へ
/231ページ
次へ
「あら、意外と良い男じゃない。 線が細くて、いかにも文学青年て感じ」 明日香さんが私の横から写真をのぞきこむと、吉澤君と高田さんも後から続く。 「凛ちゃんのパジャマ姿新鮮ですね」 「正直萌えるね! セーラー服も可愛いけどね!」 3人のおかげで和やかになりかけた雰囲気は、蒼さんがアルバムを乱暴に閉じたことで一瞬にして凍りつく。 「勝手に萌えんじゃねぇよ、吉澤」 「はっはいゴメンナサイ!」 地を這うような低い声で凄まれて、吉澤君は涙目で本棚の影に隠れた。 「蒼君、落ち着きなさい。 吉澤君が何に萌えようと、それこそ彼の勝手じゃないですか」 「そうよ蒼。大体あんた、どうゆうスタンスでキレてるのよ。 前から思ってたけど あんた達、一体どうなってるわけ?」 ……どうもなってません。 無言で蒼さんに目を向けると、気まずそうに逸らされた。 花火大会のあの夜から、蒼さんは少しずつ私と距離を取ろうとしている気がする。 目が合うと逸らされることが多いし、 屋上で2人で過ごすこともなくなった。 こうしてみんなで図書室で過ごすのは楽しいけど、やっぱり少しだけ寂しい。 あの場所でのあの時間は、私にとっては特別で。 蒼さんが、私にしか見せない顔を見せてくれているような気がしていたから。 それにあの日から、 1度も好きって言われてない。
/231ページ

最初のコメントを投稿しよう!

283人が本棚に入れています
本棚に追加