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「凛が恋じゃなくて好意だって言ってんだから、友達だろ」
そこで私の言葉を引っ張り出すなんて、ずるいと思う。
「友達なら文句言う権利ないでしょ。
ましてや彼氏だって
女の過去をほじくり返すような男は嫌われるわよ」
「そうですよ。
過去があるから今がある。さわらぬ神に祟りなし、と言いますしね」
助け舟を出してくれる明日香さんや高田さんの声は、蒼さんの耳には入っていないようで。
「友達だったら、元彼の話くらいすんだろ。
……なぁ凛。
楽しく恋バナしよーぜ」
そんなどす黒いオーラを放って恋バナする人はいません。
と言うより、私。
……蒼さんにはそんなこと言われたくない。
「蒼さんだって、この前見せてくれた写真……」
「なんだよ」
「女の子と、楽しそうに写ってたじゃないですか」
痛いところを突かれたように、蒼さんの頬が引きつる。
先週蒼さんがスマートフォンで見せてくれた写真。
クラスの友達と、海にゴミ拾いのボランティアに行った時の。
銀色のトングとゴミ袋を持って
みんなと笑っている写真の中に、
1枚だけ女の子と写っているものがあった。
スマートフォンの画面を指で撫でるようにして写真を切り替えていた蒼さんが、それが表示されたときだけ、
慌てたように指の動きが早くなった。
そのときは何も言えなかったけど、
あの女の子の甘えるような笑顔が
ずっと心に引っかっていた。
「元カノね」
「元カノですね」
「違うわ!
俺、女とちゃんと付き合ったことないって言ってんだろ!」
こそこそと呟き合う明日香さんと高田さんに、噛みつくように蒼さんは言うけど。
「じゃあ、いい加減なお付き合いなら
したことあるんですか?」
つい追い詰めるような言葉を放ってしまった。
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