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「恥ずかしいことってなんだよ。
好きな女とだったらいいの?
つーか逆に
好きって言ったら、
凛はやらせてくれんの?」
できるわけないってわかってるのに、どうしてそんなこと聞くの?
怒りでゆがんだ蒼さんの顔を
睨みつけるだけで精一杯で、何も言い返すことができない。
「『和彦さん』にはやらせた?
病院なんてベッドだらけで、やりたい放題だもんな。
看護婦さんに隠れてエロいことして興奮した?」
ただ私を傷つけるためだけにぶつけられた言葉は、
蒼さんのもくろみ通りに私をずたずたにした。
「ばか。
……大っ嫌い」
少しでも気を抜いたら
いつものように泣いてしまいそうで、
私はまばたきもできないまま、
かろうじてつたない言葉を絞り出した。
蒼さんの体が一瞬
硬直したように引きつって、
弾かれたように私から離れる。
気まずい沈黙の後、蒼さんが苛立ちをぶつけるかのように、図書室の柱を蹴った。
鈍い音ともに、老朽化している柱にヒビが入って、コンクリートの欠片が落ちる。
「……なんなんだよ、人のことケダモノみてーに。
どんだけ俺が我慢してるか
わかんねーのかよっ」
吐き捨てる口調とは反対に、
今にも泣き出しそうな傷ついた顔をして、
蒼さんは出て行った。
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