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遠ざかっていくバイクの音。
窓から見送ることもできずにうつむいている私に、明日香さんがあきれたように声をかける。
「馬鹿じゃない?
泣くなら男の前で泣きなさいよ」
「……泣いてません」
「ふーん、涙じゃないんだ。
みんなー、こいつ目から鼻水たらしてるよ。汚いから近づかないでおこー」
「明日香さんて時々、
好きな女の子いじめてる小学生みたいだよね」
「愛されてますねぇ、凛ちゃん」
……慰めてとは言いません。
せめて、そっとしておいてください。
相変わらず緊迫感のない3人の様子に、力が抜ける。
机の下で毛を逆立てているにゃーごたちに手を伸ばすと、待っていたように私の胸に飛び込んでくる。
「よしよし、怖かったね……」
抱きしめて頭を撫でてあげながら、
蒼さんが壊していった柱に目を向ける。
物に当たるとか、本当に最低。
そう思ってるはずなのに。
今までのわたしなら、そう思うだけだったはずなのに。
もし明日、蒼さんが来てくれなかったらどうしよう。
そんなことを思って不安になる自分が、たまらなく嫌だ。
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