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リゲルは不満だらけだったが、二人が乗ると落ちないように気を使って駆けだした。最初はミリアはしがみつくように乗っていたが、段々と馴れて行き景色を楽しめる余裕が生まれた。
「わぁ、綺麗な湖ですね」
青く濁りのない湖が遠くに見える。
釣りをしている親子や本を読んでいる若者、遠目に見ても楽しそうなそこを見てヒルダは言った。
「絶好のお昼寝ポイントだね!」
「そうですね。今度お弁当を持ってピクニックに行きたいですね」
山を越えて、遠くに都が見えてくる。
ベルンの村から一番近い街。
王都サイネクス。
「あそこは海の魚が他より高いが香辛料や嗜好品はわりと普通の価格で手に入る。だが、よそから持って来た物は関税が結構取られるぞ?」
ベラベラと喋るリゲルにヒルダは言った。
「だから街の外で売るのさ。昔レモネード売りをした事あるんだけどね。ちょっと歩いてお祭りやってる隣町の前で売った時、倍以上の値段で売れたの思いだしてさ」
「全く悪ガキだな」
笑いながら街の前にやってくると、ミリアは風呂敷を轢いてそこに入れていたパンを並べた。パチパチと手を叩くとミリアは大きな声で言う。
「いらっしゃいませ。森のパン屋です! 今日はオオカミ印の運び屋さんにお店を配達してもらいました。本日は大安売り、小貨一枚でお好きなパン一つの販売です」
森のパン屋では小貨三枚でパン一つなので相当安い。
大きな街なら小貨五枚はするだろうから、その売れ行きは凄かった。
「ありがとうございます!」
長蛇の列が出来る中、さりげなくヒルダは自分の店のチラシを渡していく。
「ベルンの村に寄る際は是非、オオカミ印の赤ずきん便を~」
「あのすみません」
一人の小太りの青年が少し顔を紅潮させてヒルダに話しかける。
「はいなんですか?」
青年は綺麗な石が入った小瓶を手に持ってそれをヒルダに手渡した。
所謂プレゼントである。
「これ、私に?」
始めての事に少しドキドキしながら、髪の毛を耳にかけてヒルダはそう言った。
「いえ、あのパン屋の子に渡してください」
「は?」
「一目見ただけでもう胸の奥を触られるようなそんな気持ちになっちゃって、絶対ベルンの村までパンを買いに行くと伝えてください!」
「はぁ、私運び屋なんで、これ依頼ですか?」
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