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★『青いバラを届けに』
「青いバラ?」
ヒルダはベルンの花屋さん、メフィスに呼ばれてお茶を御馳走になっていた。
数種類の果物が入ったフルーツティーに花からとったフレバ―が香る贅沢なお茶。
「えぇ、それを病に伏しているジオテラスのグランマに」
「メフィスさんのおばあちゃん?」
「僕の祖母じゃないよ。ジオテラスのグランマ知らないのかい?」
「全然」
リゲルがハァとため息を漏らす。
「お前はもう少し社会を知れ、ジオテラスは大国で唯一王政をしいていない国だ。娯楽の国、毎日毎日山みたいな金貨が行き来するとんでもない国だ。そこを取りまとめているのがグランマ、アンヘル・ガウェイン。昔は腕利きの傭兵だったんだけどな、もう老いぼれのババァだ」
妙に饒舌に語るリゲルにメフィスは何度も頷いた。
「リゲル先生、よく知ってますねぇ。グランマはウチのお得意様でもあるので、何か差し上げようと考えていた所、青いバラが一輪咲きまして」
青いバラは幸運の証、作ろうと思って咲かせる事が出来ない珍しい花。
願いが叶うという花言葉であり、一輪で家一軒と交換したなんて話すらある高級品。
「それあげちゃうの? 売ったら凄い値段になるよ?」
ヒルダが声を荒げて言うとリゲルは呆れて言った。
「お前そういう事だけは良く知ってんのな?」
「一度一攫千金を狙ってバラを育てた事があるんだよね。結局全部枯れちゃったけど」
ヒルダの性格上花を育てるなんてまず不可能だなとリゲルは納得し、脱線した話を戻した。
「で? そんな大事な花をこいつに任せていいのか?」
リゲルが最初何を言っているのかヒルダには分からなかったが、メフィスはにっこりと笑うと頷いた。
「ヒルダちゃんならきっとグランマに届けてくれるんじゃないかって思ってね」
二人の話を聞いてヒルダは飲んでいたフルーツティーを噴出した。
「えぇーーーー!! もしかして私が届けるの?」
「ヒルダちゃん、引き受けてくれるかな? 出来る限り報酬は弾むよ」
「報酬はいらん」
リゲルが独り言のようにそう言うがヒルダはそれに反論する。
タダ働きを強いられるヒルダは納得がいかない。
「嫌だよそんなのぉ!」
「こんな高い物を運ぶ経験をこんな早くできるんだ。喜べ」
「喜べるか!」
ヒルダの言葉を無視してリゲルは言う。
「いくぞ」
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