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きょろきょろと見渡して一件の小屋を見つけるとヒルダはそこの人にお手洗いを借りた。
いつまで経っても小屋から出てこない事にイラだってリゲルが小屋に入ると、ヒルダは小屋の老夫婦に食事を御馳走してもらっていた。
「何やってる?」
「いやー、長旅の栄養をって二人はトマト農園をしてるんだっさ! このトマト超美味しいよ」
そう言ってトマトを頬張るヒルダを見てリゲルは呟いた。
「そういう所だけは似てるな」
「えっ?」
「いや、こっちの話だ」
親切な老夫婦はリゲルにもトマトを振る舞ってくれ、途中で食べるようにと大きなトマトを二つくれた。
「ありがとー! もし何か運んでほしい物があったら、オオカミ印の赤ずきん便に相談してね! トマトのお礼にサービスしちゃうから」
そう言ってビラを渡す。
「貨幣経済の時代にお前は食い物で働くんだな」
「なんでもかんでも金、金って言ってたら金の奴隷になるよ? ってお婆ちゃんが言ってた」
ゆっくりと霧の深い谷を進む。
「全然前見えないけど大丈夫?」
「お前と違って私は臭いで路が分かるからな」
「先生ってほんと便利だよね」
「ったくおい、そこから下を覗いてみろ」
殆ど何も見えない中で何を見ろというのかとヒルダは言われた所を見ると、何か四角く大きな乗り物のような物が見えた。
それは錆だらけに苔だらけでで一体どれほどの年月そこにあるのか分からない骨董品だった。
「何あれ?」
「懺悔の時代の遺物だと言われている」
「懺悔の時代?」
「あぁ、聞いた事あるだろう?」
「人々に選ばれた神様が人々の行いに怒って世界を燃やしたっていう? あれそういう昔話じゃないの?」
「煙のない所に火は起きないよ。あれの先端にある長い物は何に見える?」
目を凝らしてヒルダは黙った。
そして開いた口が言った言葉。
「大砲? だとしたらすっごく大きいね」
「あぁ、あれを欲している国もたくさんある。あれが何なのか分からないのにな」
「私もあれ欲しいな」
「何に使う?」
「あの大きさの大砲なら花火上げるのにちょうどよくない?」
「ふっ」
リゲルが吹いた。それにヒルダは馬鹿にされたと思って吠える。
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