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「なによー笑わなくたっていいじゃんかぁ!!」
「いや、アリスも全く同じ事言ったからな」
「お婆ちゃんが?」
「あぁ、私たちオオカミは人間よりも険しい所を行き来できる。だからたまにあーいう神話の時代の遺物を見つけるんだ。きっと我々の世界よりも技術が発達していたんだろうが、それを上手く使えなくて滅んだんだと私は教わった」
「誰に?」
「学校の先生にだ」
「オオカミに学校とかあるの?」
「お前、馬鹿にするのもいいかげんにしろよ!」
さすがに怒ったリゲルが身体を揺らすので、ヒルダは笑いながらリゲルの背中を撫でた。
「嘘だよ。嘘、じょーだん。先生達ビーストの方が指導者向きだって習ったよ」
人と獣人と獣。
一昔前は争いや差別があった。
それはどの種にとっても黒い過去。
忘れてはいけない歴史。
しかし、ヒルダはそんな時代は知らない。
右を見ても左を見てもどの種族にも囲まれていた。故にそのような感情は持ち合わせてはいない。
ケロっとした表情を向けるヒルダをにリゲルは再度笑った。
「さっきからなんなのさー」
「いや、少し進んだ所で今日は休もう」
霧が晴れた所までが今日の進める距離だと感じそう言ったリゲルだったが、何者かに囲まれている事を瞬時に察知した。
「ヒルダ、しっかり掴まっていろ。何か分からんが、囲まれた。強攻突破する」
「えっ? えー? ひぃい。速い」
ヒルダは必死にリゲルにしがみつき青いバラの入った入れ物を抱きしめた。
この旅は簡単には終わりそうにないなと諦めにも似た、また期待の篭もった何かがヒルダに芽生えた。
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