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リゲルとガルムのやりとりを見ながらヒルダが手の中でバラの入った容器を触っていると一人の男の子がそれに気づいた。
「おいガルム! あのオオカミの上にいる女、青いバラ持ってやがるぞ!」
ガルムはヒルダを見つめて笑った。
なのでヒルダも笑顔を送ってみたが、ガルムはヒルダではなく青いバラを見つめる。
「こりゃ大物だな! 全員かかれぇ!」
小さな子供からヒルダくらいの年の年齢までの子供達が獲物を持ってリゲルに襲いかかる。
リゲルの首に縄がかけられ急にリゲルの身体が止まる。
「ぐっ」
「うわあああああ!」
ヒルダは反動でリゲルの背中から飛び出した。
「しまった」
身体能力が獣人に比べて低いヒルダが包囲されるのは一瞬だった。
「あはは、ねぇこんな事やめようよ。これはさ大事な届け物なんだ。だから、あらっ」
一人の少年がヒルダから青いバラの入った用意を奪い取る。
「よし逃げろ!」
ガルムの号令と共に蜘蛛の子を散らすように子供達は逃げる。
それと同時に霧が再び濃くなって辺りは見えなくなってくる。
ぼーっとその様子を見ていたヒルダを咥えると背中に向けて放る。
「追いかけるぞ!」
「先生でも」
「私の鼻を見くびるな」
リゲルが走り、何かを殴る素振りを見せる。
「うわぁ」
リゲルが子供を殴ったのだろう。
「先生、暴力はダメだよぉ」
「怪我をしないように加減はしている。バラを持ったガキを見つけたぞ」
「えっ?」
リゲルが掴んだ手に十歳に満たない兎の耳をした男の子が瞳に涙を溜めてこっちを見ていた。
「お願い……食べないで」
「喰うかぁ! バラを返せ。ヒルダ奪い返せ!」
(もう、大人げないなぁ)
「君、ごめんね。それは大事な物だからあげれないけど、トマトあげるよ」
青いバラの入った容器を男の子から取ると、代わりにトマトを掴ませた。それを見て男の子が笑う。
可愛く笑う男の子にヒルダも笑いかけた刹那。
「ミルを離せぇ!」
鉄砲玉のようにリゲルの手から男の子を奪う影、それはガルムだった。
小さな白いナイフをリゲルに向ける。
「そんな玩具で私に傷をつけれると思うのか?」
「あぁ、そう言ってきた連中を返り討ちにしてきたナイフだ」
リゲルとガルムが交差する。
ザッっと嫌な音がして赤い血舞った。
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