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「ヒルダ、ヒルダ起きなさい!」
枕に抱きつきながら夢の世界にいる金髪の少女、ここは王宮の高級な羽根布団に彼女はその城のお姫様……などではない。
運び屋稼業で一財産稼いだクロイツ運送会社の一人娘、ヒルダ・クロイツ。
今年で十五になる。
「いやらぁ、もう十二時間寝るぅ」
働き者の両親が首を捻る程の怠け者である。
日がな一日よく眠りむくりと起きてきてはもそもそと何かを食べてまた眠るという動物のような生活をここ数年続けていた。
そんなヒルダにも得意な事が一つあった。
射撃である。
ライフルを使った的当てでは今だに記録が破られていない。
皆はヒルダは女狩人になるだろうと信じて止まなかったが、ヒルダはこう言って否定した。
「動物とか可愛そうで撃てないよ」
そうこう言う内にヒルダは今の生活が身に染みて後戻りできなくなっていた。
そんなヒルダに両親はある決断をしたのである。
「先生、どうかウチのバカ娘を更生させてください」
ペロン。
みょうにくすぐったくて生暖かい。
気にせずに夢に集中。
ペロン。
(あぁ、段々腹立ってきたな)
ぱちりとヒルダは目を覚ました。
あたまがゆっくりと覚醒していく中、目の前にありえない生き物がいる。
「でっかい犬?」
目をこすってヒルダはそれを見直すと段々顔が青くなっていく。
「ひぃ! オオカミ」
「少し落ち着け」
ヒルダは少し考えて叫んだ。
「しかも喋ったぁ」
「お前わざとだろ?」
オオカミにそう言われてヒルダは舌を出して笑った。
「で? あなたは誰? 私は食べてもおいしくないよ」
「誰がお前みたいな人間の小娘喰うか! 私はお前の両親に頼まれてお前が立派な運び屋になれるよう指導する為にわざわざ呼び出されたリゲルだ。お前を優秀な運び屋に育てあげてやる。以後私の事は先生と呼ぶがいい」
リゲルをよく見ると青い綺麗な毛並を持った大きなオオカミ。
その首には銀色の首輪をしており、特別配達指導員と書かれていた。リゲルは何か大きな箱を咥えるとそれをヒルダの前に置いた。
「それがお前の制服だ。着替えろ」
ヒルダが中を開けるとエプロンタイプの作業服と赤い頭巾が入っていた。
それを見るとゆっくり箱をしまう。
(うわだっせ)
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