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「何処さここ!」
「ここは王都から離れた田舎町のベルンだ。旅商人が多く流通には適している。田舎だけに運び屋業は好まれるぞ。みんなやりたがらないからな」
「うぅ、やっぱり嫌だぁ」
「開業資金はクロイツ運送から出てるんだ。私が手取り足取り教えてやる。とりあえず看板作り! その後はビラ撒きだ。森に看板の材料を取りに行くぞ!」
「看板屋さんは?」
「自分で作るんだ」
そう言われてヒルダはだらだらと村の中をリゲルと共に歩いた。森の中に入るとリゲルは肩に背負った手斧をヒルダに渡す。
「これで看板用の木を切れ」
ヒルダは心底嫌そうな顔で斧を振り下ろす。
「ねぇ先生」
「なんだ?」
「バズーカー砲持ってきたらダメかな?」
「ダメだ」
何もかも諦めたような顔をして再び斧を振りかぶり木を叩く。
奇跡的に良い所に入り、リゲルと見合わせて笑った時、ガシャンと何かが倒れる音がした。
音がした方向に行くと、そこには馬車が転倒し、それに乗っていた男性が倒れていた。
「わ、私のせいかな?」
「……」
「ねぇ、先生なんとか言ってよ!」
「とりあえず助けよう」
リゲルに言われて男性の容体を確認すると、男性は足をくじいていた。
「大きな石に馬車の車輪をとられて……」
「はぁ、良かったぁ私のせいじゃないや」
「素敵な御嬢さん、この手紙を参道に通る王宮行きの馬車に持って行ってくれませんか?」
「えぇ?」
「運び屋さんなんでしょう? 時間がないんです」
何で分かるのと思ったヒルダだったが、リゲルが自分の首輪を見せつけるように男に向けていた。
「ヒルダ、初仕事だ。私の背に乗れ! 特別に許す」
「えっ?」
「いいから」
リゲルに咥えられるとヒルダはリゲルの背に乗った。
フワフワと柔らかく果物のような香りのするリゲルの毛並。
「先生柔らかい」
「振り下ろされずに乗っていろよ!」
ヒルダは馬には乗った事があったが、さすがに狼はない。
風のようとはこの事を言うのだろう。恐ろしく速いリゲル。
「さすがは王宮行きの特別な馬だな。速い」
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