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「あと、冷たいミルクもね! 先生は何食べる?」
「ミートパイを」
「はい! 今日もリゲルさんは可愛いですね」
そう言われて顔を背けるリゲルにヒルダはニヒヒと笑った。
「くっ、これ喰ったらすぐにビラ撒きに戻るんだからな!」
「はいはい、分かってますよーだ」
パン屋の店内にある小さなテーブル席につくと、ヒルダはパンケーキの登場を今か今かと待っていたが、奥から「あー!」と言うミリアの叫び声が聞こえる
(うわぁあ、嫌な予感しかしないなぁ)
ミリアが笑顔で、されど少し曇った表情をしてパンを運んでくる。
「はい、リゲルさん」
「あぁ、ありがとう」
皿を地面に置くとリゲルはそれをパクりと囓る。
「うん、美味い」
ヒルダはナイフとフォークを持つと自分の前に配膳されたパンケーキを見る。
いつもと変わらない太陽のようにまん丸で、ふっくらとしており、空腹を誘う香りと焦げ目が全くない狐色。
まさにパンケーキの完成形態。
「ミリアちゃん、これは何だ!」
文句の付けようがないパンケーキに対してヒルダは不満が一杯。
ミリアは暗い顔でヒルダに言った。
「ヒルダさん、ごめんなさい。蜂蜜を切らしてしまって……蜂蜜売りの商人さんが来るのは三日後だから、それまでは蜂蜜を使ったパンも出せなくなってしまいました」
「蜂蜜切らしたって……」
美味そうにミートパイを食べ終わると、リゲルは言った。
「そりゃ毎日毎日たっぷり蜂蜜ぶっかけて喰う客が来ればそうもなるだろうよ」
「うっ……」
ヒルダはミリアの好意に甘えて確かに蜂蜜を使いまくった。
蜂蜜はパンケーキだけでなくパンやクッキーにも多様されるハズである。
商品が作れないとなれば店が儲からない。
「いえ、気にしないでください! 毎日ヒルダさんが食べに来てくれる事でこちらも感謝していますので!」
そう笑顔で言うミリアにヒルダはミルクをグビグビと飲んで言った。
「よし、蜂蜜を運んで来よう」
「蜂蜜取りに行くのか? お前それは運び屋の仕事じゃないぞ」
ヒルダは指を振ってリゲルを馬鹿にしたように笑う。
「ミリアちゃんのパンを王都の前で販売するのさ。そのついでに蜂蜜買って帰ってくるの。ミリアちゃんさえよければだけどね!」
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