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ふと目を覚ますと、辺りはもう薄暗くなっていた。
どのくらい時間が経ったのか腹が減っていた。
家政婦が来て食事には困らない。食べなければ次に用意される。
そんな生活を続けてもう何年にもなる。
離れを出てくと明かりがついていない。
「雛?」
母屋に向かってる途中で、視界の隅で暗い庭に何かが横切った。
モノクロの世界に何か。
庭木の間に何かが動いた。
ネコ?いや、もっと大きい。
犬?屋敷に迷い込んだのか?
庭木の奥にまた動く。手前にも影が動く。
見ると、動くものが増えていく。
そして暗い中に銀の対の目が現れた。
それも増えて庭はたくさんの獣に取り囲まれた。
母屋には誰もいない。
いや、ひとりだけいた。
自分を知らない雛がひとり―――
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