『蒼銀の恋』

16/60

312人が本棚に入れています
本棚に追加
/62ページ
ふと目を覚ますと、辺りはもう薄暗くなっていた。 どのくらい時間が経ったのか腹が減っていた。 家政婦が来て食事には困らない。食べなければ次に用意される。 そんな生活を続けてもう何年にもなる。 離れを出てくと明かりがついていない。 「雛?」 母屋に向かってる途中で、視界の隅で暗い庭に何かが横切った。 モノクロの世界に何か。 庭木の間に何かが動いた。 ネコ?いや、もっと大きい。 犬?屋敷に迷い込んだのか? 庭木の奥にまた動く。手前にも影が動く。 見ると、動くものが増えていく。 そして暗い中に銀の対の目が現れた。 それも増えて庭はたくさんの獣に取り囲まれた。 母屋には誰もいない。 いや、ひとりだけいた。 自分を知らない雛がひとり―――
/62ページ

最初のコメントを投稿しよう!

312人が本棚に入れています
本棚に追加