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その後ろに続き一斉に跳び上がった影と同時に走り出す。
あの夜。
冷たい雨に打たれボロ雑巾のようになってた雛をまだどこかへと運ぼうとしていた。
「雛!!」
奥の部屋、そのどこかにいる!
銀色の獣の跡を追い走る。
迷いもなく屋敷へ上がり向かう先に雛がいる!
バリッ
銀色の塊は障子を蹴破り突っ込んで、俺もそのまま後を追いかけ飛び込んだ。
低い唸り声が響く中、
月明かりに浮かび出たのはひとりの長身の男。
短い黒髪に蒼銀の瞳。
白いシャツ姿のその両腕にはぐったりした雛が抱かれていた。
「雛!」
その男の周りには同じく銀色の瞳を持つ獣が低い唸り声を上げる。
犬―――いや、違う。狼
「てめえは」
「悪いがこの娘はもらってく」
雛を腕に抱いた男が冷酷に告げた。
「おまえは誰だ?なんで雛を拐って行こうとする?」
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