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月明かりに銀色の影。
狼たちを従えた男が俺を見た。
「俺の名は銀。この娘は俺の許嫁だ」
「……許嫁?」
「この娘が人間ではないことに気づいただろう?悪いことは言わない。ここから先、俺たちには関わらない方がいい」
雛を抱いた銀と名乗る男が一歩踏み出す。
「待てよ。雛は俺が預かったんだ。得体の知れないあんたには渡せない」
「許嫁じゃ不服か」
「当たり前だ」
それでも雛を抱いたまま無視して歩き出す。
その肩をつかむと、脇に控えた狼たちが牙を剥き出しに飛び掛かろうとするのを銀が止めた。
銀色の瞳が剣呑に光る。
銀色の瞳の奥から滲む苛立ちが見えた。
「―――離せ」
「離さない!」
均衡が崩れれば狼たちは飛び掛かってくる。
でも離すわけにはいかない。
「おまえ、死にたいのか―――ならば」
パアァーン
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