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振り返る。
美しい体躯が庭石の上で月の光を浴びて俺たちを見た。
銀の瞳。
そして、遠吠え…宣戦布告。
今は引くが次は必ず連れ帰る。
そう告げた瞳は庭木の奥へと消えて行った。
後には奏と俺、そして寝台に眠る雛。
「…銀の狼ね。そしてその花嫁か」
「雛は人間だぞ。狼じゃない」
障子が破れた戸を脇に退け、眠る雛を抱え上げる。
「遼太郎、雛をどこへ連れてくんだ?」
「離れに連れてく。俺の隣の部屋ならあいつらが侵入してきてもすぐにわかるしな」
「おまえが?雛を?部屋に?」
「俺の部屋に連れてくんじゃねぇよ。隣の部屋だって言ってるだろ」
母屋にはひとり置いておけない。
少なくとも。
奏が不思議そうな顔をして見てる。
「へぇ、おまえが、ねぇ」
「なんだよ?」
「別に。他人には全く興味を示さなかったヤツが変わったなと思っただけだ」
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