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広い屋敷。
父と母は俺を捨ててるわけじゃないってことも。
もうそれがわかる歳になった。
バイクで走り続けるのが好きだった。
だけど今はもっと違う道を走ってみたいと思った。
誰かの後押しが欲しかった。
「……遼太郎…?」
目を覚ました雛が青みがかった瞳で真っ直ぐに見つめる。
雛が狼の花嫁。
それもあの男―――銀の。
「…さっき、大きな犬が部屋に入って来て―――わたし、あの犬どこかで」
「記憶違いじゃないのか?雛のそばには犬なんていなかったぞ」
「…いない?」
「ああ。疲れてたんだろう?襖にもたれて寝てたからな。夢でも見たんじゃないか?」
「……夢?」
小首を傾げる雛をそのまま離れへと連れてく。
離れへの小橋を渡ると雛がわたわたと身動ぎした。
「離れって、遼太郎さんが住んでる離れ?」
「ああ、だから?どうした?」
「部屋お邪魔しちゃ遼太郎に迷惑かけちゃうから」
「今更だな。迷惑ならもう十分に掛けられてる」
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