『蒼銀の恋』

25/60

312人が本棚に入れています
本棚に追加
/62ページ
拾った雛は幸福の神ではなく疫病神。 そう思うのに追い出せない。 ひとり泣いて涙の跡がある雛を放っておけない。 ましてや、狼の花嫁になどできるわけない。 「遼太郎…?」 腕に力がこもる。 初めて見たものを親と思い込んだヒナのように、絶対の信頼でついてくる。 俺はただ警察と関わるのが嫌だっただけ。 すぐに雛の素性が知れると思ってた。だから。 16、17歳のガキに振り回されて、それでも突き放せない。 「……傷、痛むんでしょ?」 「?」 「下ろして、わたしちゃんと歩けるから…遼太郎、無理しちゃダメだよ」 雛が訴えるも離せない。 離せばどこかへと連れ去られてしまうような気さえする。 「遼太郎、下ろして」 「黙ってつかまってろ」 「でも、傷が」 青みがかった目で見上げしゅんとする。 あの男、銀が大事そうに雛を抱えてた。 許嫁だと―――
/62ページ

最初のコメントを投稿しよう!

312人が本棚に入れています
本棚に追加