『蒼銀の恋』

26/60

312人が本棚に入れています
本棚に追加
/62ページ
離れにはぼんやりと灯り。 障子を開けて奥の間に入ると雛を下ろした。 下ろしてから気づいた。 連れてきたはいいが布団がない。 いつも奏が遊びに来ても朝まで飲んでばかりで必要がなかった。 俺の部屋から布団を持ってきて敷くと雛は眠ろうとしない。 「遼太郎の布団でしょ?わたしが眠るわけにいかないよ。それに…遼太郎はケガしてるし」 「俺は布団がなくてもかわまねぇ」 「そんなのダメだよ、布団は遼太郎が使って」 雛が譲らない。 だったら――― 雛の手を引いて一緒に布団に倒れ込む。 きゃっ、 慌てて起き上がろうとした雛を止めた。 「ガキ相手に何もしねえよ、黙って寝ろ。明日、家政婦が来たら布団運んでもらう。それまで我慢しとけ。まったく。布団がどこにあるのかわかりゃしねえ」 雛に背を向けた。 ひとつの布団に雛と寝る。 大したことじゃない、大したことじゃないのに背中が熱い。
/62ページ

最初のコメントを投稿しよう!

312人が本棚に入れています
本棚に追加