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離れにはぼんやりと灯り。
障子を開けて奥の間に入ると雛を下ろした。
下ろしてから気づいた。
連れてきたはいいが布団がない。
いつも奏が遊びに来ても朝まで飲んでばかりで必要がなかった。
俺の部屋から布団を持ってきて敷くと雛は眠ろうとしない。
「遼太郎の布団でしょ?わたしが眠るわけにいかないよ。それに…遼太郎はケガしてるし」
「俺は布団がなくてもかわまねぇ」
「そんなのダメだよ、布団は遼太郎が使って」
雛が譲らない。
だったら―――
雛の手を引いて一緒に布団に倒れ込む。
きゃっ、
慌てて起き上がろうとした雛を止めた。
「ガキ相手に何もしねえよ、黙って寝ろ。明日、家政婦が来たら布団運んでもらう。それまで我慢しとけ。まったく。布団がどこにあるのかわかりゃしねえ」
雛に背を向けた。
ひとつの布団に雛と寝る。
大したことじゃない、大したことじゃないのに背中が熱い。
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