『蒼銀の恋』

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成田の病院で一週間世話してくれた。 行くところがないなら置いてやってもいいと思った。 ガキだから。それだけ。 「…おやすみなさい、遼太郎」 「………」 雛に背を向けたまま目を閉じる。 ガキの体温は高く、背中が熱い。 「……遼太郎、ありがとう」 小さい鈴のような声。 雛がそっと語りかけ、手がそっと背中に触れた。 そのままお互い何も言わずに時が過ぎてく。 しばらくすると静かな寝息が聞こえてきた。 振り向くとしがみつくように背中にすがって、雛の背中側は布団が掛かっていない。 雛を引き寄せ布団を掛けてやる。 信頼しきってる寝顔にもう言葉もでない。 親鳥がヒナを思う気持ちもこんな感じだろうか? 慕われると世話を焼きたくなる。出来の悪い子ほどかわいく思えてくる。 「………」 狼か――― あまりに非日常過ぎて頭が追い付かない。 ただわかるのは、雛が狙われていることだけ。
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